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Network of Rheumatic Disease in Shinshu (NORDIS)

リウマチ関連情報

リウマチとは   

信州大学医学部附属病院 脳神経内科・リウマチ膠原病内科 松田正之 先生 

 「リウマチ性疾患」とは、関節・筋肉・骨・靭帯などの身体を支え動かす器官に痛みを起こす病気の総称です。
全身性エリテマトーデスや多発筋炎などの膠原病、痛風、変形性関節症などがこの中に含まれますが、世の中で一般的に「リウマチ」というと「関節リウマチ」という病気のことを指します。

1.関節リウマチの原因と病態
 関節リウマチは関節の中にある滑膜という薄い膜の炎症から始まる疾患です(図1)。滑膜が増殖して厚くなり、軟骨や骨を侵して関節を破壊します。
 この病気は、病原菌などの外敵から身体を守る免疫システムに異常が生じる「自己免疫疾患」の一つと考えられています。自分自身の正常な組織を外敵と間違えて攻撃してしまうのです。発病の原因や引き金には何らかの遺伝的背景、微生物の感染、ストレスなどの複数の因子が絡んでいると考えらえれていますが、詳細なメカニズムは不明です。


図1 関節の模式図  (リウマチフロンティアより転載許可をいただきました)

2.関節リウマチの症状
 よくみられる初期症状は「朝のこわばり」です。起きた時に手の指がこわばって、握ったり開いたりしにくい感じがします。他の病気でも手のこわばりは見られますが、関節リウマチの場合には数時間と長く続くことが特徴です。
 関節の腫れや痛みもよく見られる症状です。全身の関節がおかされますが、手の指の2番目(真ん中)と3番目(つけ根)の関節、足趾のつけ根などの小さな関節が侵されやすい傾向が見られます。しかし、指先に近い第一関節が侵されることはほとんどありません。
 身体のほぼ左右対称の関節に症状が出るという特徴もあります(左右対称性)。進行とともに症状は全身のあちこちの関節に広がっていきます。また、天候によって痛みが左右されることが多く、低気圧が近づいて天気が崩れる前、湿度が高い雨の日、寒い日には痛みが強まります。
 微熱、貧血、全身倦怠感など、さまざま全身症状を伴うこともあります。
 関節の痛みと腫れは慢性に経過し、放置しておくと変形をきたして日常生活に大きな支障をきたします。患者さんの経過はまちまちですが、大きく3つに分かれます(図2)。「多周期型」といって、病状の改善と悪化を繰り返すタイプが最も多く、全体の70-80%を占めます。多周期型ではだんだん悪化していく場合が多いのですが、徐々に改善することもあります。この他に、発病後に症状が治まってしまう「単周期型」と急速に進行する「急性増悪型」がそれぞれ約10%あります。


図2 関節リウマチの臨床経過 (リウマチフロンティアより転載許可をいただきました)

3.リウマチの疫学
 全国に約70万人の患者さんがおられ、毎年1〜2万人が新たに発病すると推測されています。
発症年齢は広範囲にわたりますが、40-50歳台の働き盛りに多いことが特徴です。
また男女比は1:4で女性に多く発症します。

4.関節リウマチの診断
 診断にあたっては以下に示す米国リウマチ協会の分類基準(1987年)が本邦でもよく用いられています(注:この原稿作成時は以下の1987年の診断基準が用いられていましたが、2010年アメリカとヨーロッパリウマチ学会が共同で新分類(診断)基準を発表し現在は全世界的に新基準を用いる方向で進んでいます(事務局より))。

@朝のこわばり:少なくとも1時間以上
A3か所以上の関節炎:同時に少なくとも3関節以上で腫脹が見られる
B手関節炎:手関節、手の指の2番目(真ん中)の関節、3番目(つけ根)の関節の少なくとも1か所以上で腫脹が見られる
C対称性関節炎:同時に両側の同一部位で関節炎がある
Dリウマトイド結節:肘伸側に出現しやすい
Eリウマトイド因子
Fレントゲン変化

 全部で7項目のうち4項目を満たせば関節リウマチと診断できる、ということになっていますので、診察や検査もそれに沿って行われます。まず診察で関節に腫れや痛みがないかどうかをチェックし、次に血液検査とレントゲン検査へと進みます。
 血液検査ではリウマトイド因子と炎症反応(血沈、CRP)が重要です。リウマトイド因子は、自分自身の身体の成分を外敵とみなして攻撃してしまう「自己抗体」の一つです。関節リウマチでは血液中のリウマトイド因子が高くなり「陽性」と判定されます。ただし、約20%の患者さんではこの値が低く「陰性」と判定されてしまうことがあるので注意が必要です。たとえリウマトイド因子が陰性であっても関節の腫れや痛みがある場合には、症状や他の検査データもふまえ、総合的に判断する必要があります。
 逆に関節リウマチ以外の他の膠原病、肝臓病、高齢者、わずかですが健康な方でもリウマトイド因子が陽性を示すことがあります。リウマトイド因子は関節リウマチの診断に重要ですが、慎重な気配りが常に欠かせません。
 最近、抗CCP抗体(cyclic citrullinated peptide)抗体が保険適用で簡単に検査できるようになりました。この検査は関節リウマチに対してリウマトイド因子よりも感度が高いと言われており、診断の際に広く使われるようになってきています。
 一方、炎症反応は関節リウマチの活動性を調べるのに有用です。血沈とは赤血球が沈んでいく速度のことで、炎症活動が激しいほど速くなります。CRPは炎症反応によって血液中に出現する蛋白質です。感度が高く炎症早期から上昇します。
 レントゲン検査は関節内部の様子を判断する上で欠かせません。関節の骨と骨のすき間が狭くなっていないか、軟骨が破壊されていないか、骨の破壊はないか、などがチェックポイントです。



信州大学医学部 整形外科(運動機能学講座)
上肢班

関節リウマチによる上肢障害に対する再建術や人工関節置換術

関節リウマチ肘における人工肘関節全置換術
肘関節がリウマチに罹患して破壊が進むと、痛みや可動域の制限が生じて、洗顔動作、洗髪動作、食事、トイレ、物を持つなどに困難が生じます。私達は過去に5年間に23人の患者さんに人工肘関節全置換術を行ってきました。使う機種は関節の状態によって2種類です。過去に肘の手術歴がなく、骨折がなく、肘の骨が比較的保たれている場合はKudo式を用いており、それ以外はCoonrad-Morrey式を用いています。どちらも手術、リハビリで約6週間の入院が必要です。手術後の成績について、20年以上前に行った患者さんから経過をずっと診させてもらっていますが、術後5年経過しても90%以上の患者さんの肘が疼痛なく使用出来ています。




関節リウマチによる手指の変形、機能障害に対する手術
関節リウマチでは手首、指の変形が生じて痛みや、使いずらさ、変形などが出現します。これらの障害に対して手関節固定術、シリコンによる人工関節置換術、指の関節形成術、などを行って患者さんが痛みなく、指が使え、形も良くなり満足されています。  





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